焼鳥屋 開業!繁盛!への道しるべ

NO.4 開業から移転!そして2号店へ。

焼鳥一力

宇部新川に焼鳥一力を開業し、来客数は安定し満席状態で来店をお断りする日がほぼ毎日。2号店目を出店しようと動きまわっていたが、2号店ではなくて広い店舗に移転するという選択に至った。

焼鳥一力1号店の暖簾
NO.3 1度来てくれたあなたは常連様!未経験者が山口県宇部新川に焼き鳥屋を開業し軌道に乗せるまでの流れを、気付きや心構えと合わせてご紹介します。...

移転後に焼鳥一力は大繁盛店へと成長し、さらに2019年には「RICKY」という新店舗を同じく宇部新川にオープンをさせる事ができました。

そこで今回は「焼鳥一力」の移転から新店舗の出店を決意するまでの流れをご紹介します。

Contents

物件は不動産屋経由で探さない

飲食を始めてから知ったことだが、良い物件というものは不動産屋に情報が出る前にすでに契約が決まってしまっているということ。その情報を掴んでいるのが飲食店に関わりのあるその地域の酒屋、厨房機器屋、おしぼり屋などの取引業者。飲食店との日々の会話から情報を仕入れ、それが広がり内輪で次の入居者が決まってしまうことが多い。

つまり未契約のまま不動産屋に出ている物件は、飲食人に人気のなかったあまりもの物件ということが多い。(全てがそうとは言えないが)

なので、取引業者と仲良くなり、移転や2号店目を考えていること、いい情報があれば教えて欲しいということを自らが発信することが大事だ。また、繁盛店を作る実績があるということは、物件を探してもらう取引先への信頼につながる。信用も信頼もない他人と取引するより、関係性を築き上げてる人と取引した方が、お互い好都合。酒屋でも、厨房機器屋も、おしぼり屋も、繁盛店が出店したほうが長く契約してくれ、長く取引でき、長く繁盛してくれたらwinwinですよね。だから、繁盛店を作ることでおのずと物件紹介の話が回ってくるようになり、高物件で結果を出しやすくなり、おのずと評価も高まるって流れだ。

移転の罠

移転前は繁盛していたのに、移転後に景気が悪くなったという話はよく聞く。空きテナントが出るという状況は、前入居者の経営がうまくいかなくなって撤退したパターンが多い。だが、前の店がうまくいかなかったという理由で、その物件の立地が悪いと決めてしまうのは良くない。

その物件に、過去一度でも大繁盛した経歴があれば、その物件自体には悪い理由はなく、その土地の持つパワーはいいものがあると僕は判断する。僕が今回移転先に決めた物件の前々回に入っていた店は、そこで10年続き大繁盛をし、その後違う場所で自社ビルを建てたと聞いた。

そのことから、この土地と場所は繁盛する土俵が整っていると感じ、移転先に決めた。あとはその土俵の中でいかに自分が戦うか。こっちのやり方次第だ。

良い物件なら交渉は迅速に

改装中の焼鳥一力

移転先として決定した物件は、同じビルの隣の店舗だった。この物件にした理由は、小道の奥に隠れた店という現在の一力の立地イメージを変えたくなかったからだ。

移転先は、既存店の3倍の広さの30坪。前は焼肉屋で、焼鳥屋をやるにはほぼ全ての内装を崩さなければいけなかった。一度全部崩して新しいものを作るということは、莫大なお金がかかるということは素人ながらにも分かったいたにも関わらず、前のオーナーにそこの設備を300万円で買ってくれと頼まれた。使わない設備にお金を払うことに納得はできなかったが、断ってしまうと交渉権が違う人へ渡ってしまう可能性がある。せっかく見つけたこの物件を何としてでも手に入れたかったため、その条件で買うことに決めた。

少しでも安く、少しでもいい条件で物件を手に入れたいのはみんな同じで、手放す側もいい条件で買ってくれる人をみつけるのが望ましいだろう。取引の交渉で心痛するぐらいなら、少しぐらい高くてもとっとと物件手に入れて、少しでもそこで早く商売を始め、軌道に乗せお客様に喜んでもらえることを考えた方がいい。という考えで、交渉を進め契約した。

既存店は売却し資金の足しに

移転先の交渉をしながら、既存店を買ってくれる人を探していた。運悪く設備が売れなかった場合は、スケルトン状態に戻して家主に返す状況にもなりかねない。

今度は、関わりのある取引業や飲食仲間などに、この店を買ってくれる人がいないか探して欲しいと頼んで回った。10坪22席の店は脱サラし飲食店にチャレンジしたい人や、夫婦二人でやる店としてはちょうどいい広さのため人気はあった。皆様の協力のもと、設備を買ってくれる人が割とすぐに見つかった。

たまたま運良く売れたが、これが売れると売れないでは移転に向けての資金繰りに大きく影響を及ぼす。移転先を探すことと同じ熱量で、しっかり動いて購入者を探すことをオススメする。

コストをかけすぎないでやるのは、負けを早めるだけ

移転先は30坪44席、開業費は1500万円だった。1年半前には運転資金10万円しかない状態での出店だった僕からすると、相当な勇気と覚悟のいる決断だった。

初期投資を抑えるために居ぬき物件を探して、いかに工事に手をかけないで安く出店できるかにこだわるオーナーさんは多い。繁盛することは確定されていないし、大きな借入返済に勇気が持てないからだ。しかし、お金をかけず居抜きのまま出店すると、街の人には前の店の残像が残ってしまう。手軽くやったなというイメージも残るし、インパクトを与えることができずに失脚していまう可能性もある。小さなジャブを打って大きな利益を得ようと欲張ると、小さな利益すらえれず借金を残しサラリーマンに逆戻りするのは目に見えてる。

僕がこの大きな決断をすることができたのは、大繁盛店で修行してきた経験が大きい。味、接客、お客さんが来てくれる様々な仕掛けなどをつぶさに見てきたため、場所は違えどそのサービスを喜んでくれる人が絶対にいるという自信が、大勝負に出させてくれた。

やる前から弱腰で保険をかけてしまうと、その時点で負けを意識している。だから負けの方に引きづられてしまうのだ。

祝移転オープン

焼鳥一力の移転祝い

遂に、移転オープン!

移転オープン後は不慣れなオペレーションの中、多くのお客さんが来店してくれた。慌ただしい日々が連日続き、スタッフは体力的にも精神的にも疲れ果てていた。

そんなある日、いつも元気なアルバイトの女の子が忙し過ぎて僕に本気で怒ってきた。「大将、いい加減にして下さいよ。忙しすぎですって。」それに同調するように、もう一人のアルバイトの女の子がそうだそうだと声を荒げた。その時僕は、スタッフが怒るほど忙しくなったお店をつくれたことが嬉しく、そしてそれは僕一人の力ではなく、お店で働いてくれるスタッフがいるからこの状況にあるのだと感謝の気持ちに満ち溢れた。

店名である「一力」は、これまで関わってくれたすべての人の「力」のおかげで、「一つ」の店をつくり上げることができたという意味を込めている。常に周りの人の感謝を忘れない店でありたいという思いだ。

この時のアルバイトの子に対する気持ちも同じで、スタッフの力のおかげで、またひとつ店をつくることができ、改めて多くの人の力を頂いているなと感じた。何かをやる時はみんなの力のおかげだと感謝した。

頭ではなく体が勝手に動く動線づくり

焼鳥一力の店内

新店舗は僕が修行していた店とたまたま同じ広さであったため、焼き場キッチンを修行先と同じレイアウトで作業動線をデザインしてもらった。頭ではなく体が勝手に動く動線をつくりたかったからだ。オープン直後の店内は必ず混乱する。その状況下で指揮官であるオーナーがオドオドし、的確な指示が出せないでいると店が回るはずがない。だから、僕は指揮官がしっかりとした指示を出せるレイアウト作りを意識し、スタッフからの問いかけに的確な答えを出すことで混乱を最小限に抑えられる環境を整えた。

銀行マンが予測した「良くても1.7倍」

1.7倍。

この数字は、銀行マンが予測した移転前(22席)から移転後(44席)の売り上げ増減率。この予測は嬉しい裏切りで、オープン1カ月後(2017年10月)から現在(2020年5月時点)まで、移転前の2倍の売り上げを推移している。

席数が倍になったことで、より多くのお客さんを受け入れる環境を整えたが、平日は1.5回転、週末は2回転し、さらに当日の予約や飛び込みなどで来店してくれるお客さんをほぼ毎日のように断っており、気が付けばお客さんが店から溢れてしまう移転前の状況になっていた。

この状況をつくることができたのは、新規のお客さんを取り入れるのではなく、2回目以降の来店のお客さんを大事にするという思いが大きかったからだと思う。

人が人を呼んで繁盛につながったのだと、お客様には大変感謝している。

開業から3年半で個人事業から法人へ

求人には苦労していた。小さな焼鳥屋、忙しい焼鳥屋、怖そうな大将(見た目だけ)、そんな店にはよっぽど何かを得たいと思う変わり者しか働きに来ないとは思っていた(笑)。今回移転し店舗も広くなると、そこでこの焼鳥屋に安心感と信用が生まれる。そして店舗が広くなりアルバイトさんが増えると、スタッフ一人にかかる負担も減り、社員の求人が来やすくなるのではと思っていた。そんな矢先、「一力」オープンから3年半が経った頃、やっとやっと2人目のフル勤務スタッフが入店してくれることになった。

社員が2人になり、お客さんが増え安定した売り上げを出せるようになっていたこと、そしてそのスタッフが安心して働ける環境を整えなければという思いと、より多くのスタッフを獲得したいため、ひとつの個人商店を法人化する決断を下した。

個人事業から法人化するか否かを悩む飲食人はとても多い。法人化へ移行する時の目安や指標などはさまざまあるが、僕はオープン当初から付き合いのある税理士さんに相談に乗ってもらっていたため、法人設立に至るまでの動きをスムーズに進めることができた。税制面のメリットに目が行きやすいが、僕は安心信用に重きを置き、今いるスタッフとまだ見ぬスタッフの労働環境を整え居心地よく働ける準備をしたかった。

開業当初の僕一人で1日16時間勤務、少ないときは1か月1日休みのハードワークから脱却し、やっとここまでこれたことはうれしかった。この気持ちになれたことは、たくさんのお客様が来てくれたのと、お客様満足のために日々奮闘してくれるスタッフのおかげ以外にない。

ありがとう。

2店舗目の出店を視野に入れる

チカラ商会のスタッフ

移転してから2年後には、フル勤務スタッフが6人までに増えた。6人になったことで一度は諦めた2号店目を視野に入れるようになった。

理由は新しいサプライズを地域の方に見せたかったのと、満席のため入店をお断るするお客さんの受け皿となる店をつくりたかったから。これは移転する前の状況と全く同じである。また、増えてきたスタッフの活躍の場を増やすことや、それによる給料のアップもできると思ったためだ。

お客さんに対するサービスはオープン当初から変えていないが、変わらないために、僕たちが変わり続けることが大事だと思った。毎回同じ店で同じスタッフで同じような料理を出して、それを喜んでくれるお客様もいるが、繁盛してくるとそこを追ってくる店舗が必ずいる。

僕たちは、お客様に喜んでもらう為、お客様がイメージ出来る範囲のその少しだけ先を常に提案し、感動を与えていく必要がある。

ひらめきは財産

2号店目の物件を決める時に最初に紹介があったのは、街の中では一等地とされる場所。そこには以前、何十年と続く街の人は誰でも知っているラーメン屋があった。そんな一等地の約40坪の土地で、尚且つ新築物件。

その場所は、僕が2号店を出すための条件である「絶対繁盛」が可能な物件。地域の誰もが知っている場所で、誰もの目に入るため宣伝もいらない。

損得勘定のないヒラメキは行動する上でとても大きな力をもつ。

しかし、ヒラメイタいいアイディアに勝手に出来ない理由を付けて行動に移さないことはよくある。でも、できない理由なんて、やってもないことにつけれるの?

これだ!と、ヒラメイタ事は財産。考えても浮かばないアイディアが天から降ってくるのだから(笑)僕は今回、この事を改めて実感出来た。「これだ!」は「今だ!」なのだ。

それから、物件が決まったことによって、今までインプットばかりしてきたパンク状態の頭が、ここから一気にアウトプットしていく。

1/5か1/1か

新店舗の出店地

2号店目に決めた物件は当初、ビルの中に新しいテナントが5店舗が入る予定だった。けれどその計画を変更してもらい、僕がビルの1階から2階のすべてを借りることにした。

それは5つある内の1つになるよりも、ビルごと「チカラ商会」の店で占有することでお客さんに強いインパクトを与えることができるからだ。

ビルを1から建てる所から始めるため、とても大きな資金が必要で会社としても勝負ではあるが、その分地域住民に与えるインパクトは大きいはずだ。そのインパクトが外食に行く時に頭の中に浮かぶ、「3つの店」の内の一番手に浮上しやすくなるのではないかと考えている。

外食に行く時に、どこに行こうか頭に浮かぶ店舗は多くて「3店舗」。

その法則のもとに、頭に浮かぶ3店舗に入らないとお客様は来店してくれないし、逆を言うと3つに入れば来店の可能性は大きく上がる。既存店の「焼鳥一力」、新店舗の店、それぞれ魅力的であるならばお客様が外食するときに頭の中にこの2店舗が浮かぶ。各店舗の距離が約100メートルしか離れていないのも狙いで、「一力が満席なら新店舗に行こう」「新店舗が満席なら一力に行こう」の構図が出来上がるのだ。

まとめ

以上が移転から、2号店目出店までの流れと構想である。

「悩みとは、悩みに対する悩みでしかない」

僕が焼鳥修行に出ようか、今後の人生を悩んでいた時に心の師匠である須藤元気さんのエッセイで出会った言葉で、僕の現在の思考のもととなっている言葉といっても過言ではない。どんな不安や、悩みであってもそれは僕の頭の中での空想の出来事。現実はどう転ぶかわからないのに勝手な解釈で自分の頭の中だけで悩みを発生させ、それに悩み苦しみ現実世界で前に進めなかったり、行動に移すことをやめたりする。

現実は何も変わっていないのに、頭の中だけ動いてる・・・

やりたければやる!やりたくなければやらない!ただそれだけの話。今回、夢であった2号店目出店の為動き出したがどれだけ考えてもどう転ぶかわからない。やらない後悔だけはしたくない。この出店をきっかけに、まだ見ぬスタッフとの出会いと、お客様との多くの出会いが生まれるでしょう。僕のひらめきをきっかけに未来が変わると思ったらワクワクする。また出店することにより、もう一人の店長と料理長が生まれ、さらに現スタッフの活躍の場が増え従業員の給料を上げてあげれる事も僕の楽しみの一つだ。

ワクワクをカタチに。

僕たちの経営理念の先にどんな未来があるのかとても楽しみだ。

ABOUT ME
秋山尚登
株式会社チカラ商会代表。山口県美祢市出身40歳。宇部新川で焼鳥一力(いちりき)を開業しわずか半年で軌道に乗せる。二年後に移転し席数が倍になるも予約が取れない繁盛店へ。圧倒的な行動力を武器に、世界をワクワクさせるべく動き出す。