僕の店はビール片手に串をほおばる、おそらく誰もが簡単に想像するザ・焼鳥屋です。今回は、そのイメージからはかけ離れた「焼鳥×ワイン」をコンセプトに打ち出す、おしゃれでスタイリッシュな「焼鳥ワイン酒場TORI-BUDOU」へお邪魔しました。
訪れた理由は、僕の店でもワインを置くことを考えており、それに対してお客さんはどう思うのか…その判断材料のひとつになればと思ったからです。
そこで今回のミッションは「焼鳥とワインをメインに打ち出すことで、どんなメニュー構成がなされ、どんな風にワインの利用へと結び付けるのかを探る」です。
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焼鳥屋のイメージとはかけ離れた店舗デザイン
天神のメイン通りから小道に入った場所にあり、ポツポツと小さな飲食店が立ち並んではいましたが、人通りはあまり多くありませんでした。
そして「おしゃれで焼鳥屋のイメージではない」というのが店を見つけた時の第一印象でした。
オープンと同時の午後5時に入店。店内は、照明を抑えたしっとりした雰囲気。普段ワインを飲まない僕でも「今日はワインを飲むな」と感じました。テーブル約30席、カウンター8席の広々とした空間で、30~40代くらいの女性客が多かったです。
通されたのはテーブル席。テーブル席は厨房の人と触れ合えないため、どうしても料理を運ぶスタッフが店の顔になります。僕の席を担当してくれたのは、まだ入店して間もないとおぼしき学生風の男の子で、何を聞いてもよく分かっていなかった…。入って日が浅いのだとしても、それなりに勉強すべきだと強く思いました(せめてメニューの把握くらいは)。
僕は入店初日のスタッフには、「お客さんに聞かれて分からないことがあれば堂々と、“初日なので分かりません、分かる者に聞いてきます”と言え」と伝えています。正直なその一言があると、大概の…特に年配の方は大目に見て下さいます。どっちつかずの曖昧な反応は、嫌な気持ちになるお客さんもいると思います。なので僕だったら、先程の学生風スタッフをこっそりバックヤードに呼び出し注意するでしょう。
厨房については、焼鳥屋と謳いながらも焼いてる様が見えなかったのが非常に残念。スタイリッシュを売りにしている店のコンセプトもあるのでしょうが、同業者としてはやっぱり見たかったかな。
ワインが進む絶品料理の数々
料理は最高!の一言。店の名物「地鶏白レバー」は、レアで焼かれており、口に入れるとすぐに溶けるような柔らかい食感。臭みもなく本当に旨かった!火の入れ加減が天才的でした。
ワインに合う創作串焼きも種類豊富で、レンコンを豚バラで巻き梅肉を乗せた「レンコン巻き梅肉ポン酢」や、サーモンにタルタルソースをかけた「サーモンとイクラの親子串」、「明太とろろつくね」など、どれをとっても申し分のない旨さでした。
少し残念に思ったのは、ちょうちんやまるちょうなどの肉ネタの火加減が緩かったこと。白レバーと同じように焼いているのか、僕としてはもう少し火を加えて欲しかったです。
焼鳥×ワインの可能性は?
今回のミッション(焼鳥とワインをメインに打ち出すことで、どんなメニュー構成がされ、どんな風にワインの利用へ結び付けるのかを探る)については、屋号にワインという文言を入れ、いかにもワインが出てきそうな落ち着いた雰囲気づくりと落ち着いた接客は、ワインが苦手な僕でも思わず飲んだほど、非常にスマートな導線に乗っとったスタイルでした。
「焼鳥とワイン」持って行き方次第では、十分可能性があると感じました。
しかし、世界中のワイナリーから数多くのラインナップがあるのであらば、それをもっと全面的に押し出す接客があってもいいのではないかと感じました。
この串を食べるのならこの赤ワインが合うとか、せっかく来店されたのだからこのワインを飲んでいってなど、お客様のニーズを理解した上での簡単な、ラフな提案でもあれば、より楽しい時間を過ごせるのかも知れません。
まとめ
デートや女子会などの、ちょっとおしゃれにお酒を飲みたい時にお薦めです。フレンチほど物怖じせず、焼鳥という親近感がありながら、しかし洗練された空間を楽しむことができます。その反面、焼鳥と謳うのであれば、根本的な焼鳥の旨さをもっと追求しなければと思いました。
大変勉強になりました!