串に刺さった鳥肉を、ビール片手に豪快にかぶりつくと言う文化はもう完全に根付いている。僕も焼鳥職人として誇りをもち、日々一串入魂で焼台に向かい汗を流す。
「焼鳥=串に刺さってる」は当たり前で、揺るぎない事実だし、それ以外は想像出来ないし、してこなかった。
しかしここで、串に刺さってもなくても鳥肉を焼けば『焼鳥』だと言う僕の中では新しい発想が生まれた。
『鳥肉を焼く=焼鳥』は、当たり前なのだが、『焼鳥=串』に刺さってるしか頭になかった僕はこれを新しい発想と捉えた。
『串に刺さってる=正統派』ならば、『串に刺さってない=邪道』ではないかと考え、焼鳥職人である以上正統派しか考えて来なかった。
今回は、東京都渋谷区恵比寿にある『中目黒いぐち PIN』にお邪魔した。
今回のミッションは…『串に刺さっていない焼鳥を人気店で食らう』です。
恵比寿駅から徒歩五分の隠れ家
邪道だと考えていた焼鳥スタイルで、人気店であるのならそこにはお客様に支持された需要があると言うことなので、その支持される理由を探りに来た。
歩き慣れていない東京で、Googleマップ片手に目的地へと向かう。
近くまでは来ているし、目的地はここのはずと、メイン通りから路地に入り、そこからまた奥の方へ向かい、行き止まりの手前にある小さなビル。確かにここの2階のはずだが、看板はない。
また、近くをグルグル回り、たどり着いたのがやっぱり先程のビル。仕方なくお店にTEL。やっぱりここだった。
大体隠れ家的店には、ここを目当てに来た人なら少しは『ここが店だよ!』と、ヒントがあるものだ。
だけど、ここは違う。ヒントも答えも解らず、電話して確認したにも関わらず、お店の扉を開けるのをためらったほどだ。
この扉の先が、飲食店であることを祈りながら恐る恐る祈りながらOPEN。
外装からは想像出来ないこのギャップに、思わず『おぉぉー。』っと、声が漏れる。
でました。『ギャップ萌えの法則』である。
この飲食店い行くまでがストーリーとなり、脳でなく心で記憶する事になり、この経験を人に話したくなる。この物件で勝負しようと決めた社長さんには脱帽です。
これがもし、好きな人とのデートでの利用であれば、力を合わせ共同作業で見つけた事が、二人の距離をグッと近付けてくれることだろう。そして、その距離感のまま店内に入ったときの照明を落とした、色気のある店内がその余韻にしっかりと浸してくれる。
ニクイお店だ!
串に刺さっていない焼鳥
『串に刺さってない焼鳥を人気店で食らう』の、人気の秘密はこの店構えもおおいに関係していた。
今回のメインイベント、串に刺さってない焼鳥を早速オーダー。
見た目は、串に刺さっている焼鳥から串を抜いたような感じで、見た目のインパクトには欠ける。
焼鳥の『串』の存在感の大きさを改めて感じることが出来た。
しかし、味はよい。
焼鳥はどんなもの?と、質問すると、『串』に鳥肉を刺して焼いたものだと、ほとんどの日本人は答えるだろう。
それを基準にすると、『串』がないだけで、フォルム、価値観、存在感が半減するように感じる。
だが、色々な種類のメニューを数人でシェアしたい人、串を口に持っていき豪快にかぶりつくのをためらう上品な女性いるだろう。
その客層は少数かも知れないが確かに存在する。
それはこちらのお店が人気店であると言う事が証明もしてくれている。
大都会東京で、超隠れ家の色気のある店内で食べる、少数かも知れないが支持される串に刺さっていない焼鳥は、人気店となって行った。
こかには、社長のお客様を導き、尚且つお店を発信していくまでのストーリーがしっかりと考えられ形になったのだと思う。
大変勉強になりました。