僕は焼鳥職人になると決めたものの、美味しい焼鳥とはどういう焼鳥の事を指すのかすらわからない状況で修行スタートしました。それが今から約8年前のことです。
焼鳥はスーパーの惣菜コーナーでも、地域のお祭りでも、車の移動販売でも、今ではコンビニで売られていて、当時はどれを食べても美味しいと思っていました。
今回紹介するこのお店は、美味しい焼鳥とは、そして本物の焼鳥屋とは何か?を先輩に教わりながら、考えながら初めて食事した思い出の店・焼鳥屋「美久馬(みくま)」です。
繁華街から少し離れた落ち着いた場所にひっそりとたたずむこのお店は、木の温もりを感じれる落ち着ける雰囲気。カウンター越しに焼台があり、テーブル席もある、大人な雰囲気を楽しめる焼鳥屋です。
今回の着眼点は、このお店は炭焼きではなく、電気の焼台を使っていると言うこと。
これを、お客様目線で見たとき、食べたときに、どう感じるかを追求するのが今回のミッション!
Contents
備長炭と電気の焼台の違いとは?
僕のわかる限りで言うと、備長炭と電気の焼台の違いは3つあります。
備長炭の香りは最高の調味料!と、先輩にお言葉を頂いた事があるし、もちろん僕も香りが引き立たせる旨さを経験しています。その備長炭の香りがしない焼鳥を、お客様目線で頂いた時、一体どう感じるのでしょうか?
備長炭だと、肉の脂が備長炭に落ちて煙が上がります。この煙がネタにまとい、旨味を呼びます。この焼鳥屋らしい演出が電気の焼台だとないので、お客様目線でどう感じるのでしょうか?
脂が落ちた備長炭は温度が下がるので、職人がひばさみで備長炭を動かし、火力の強いモノをネタの下に持ってきて、また脂が落ちて火力が弱まったら強いのを持ってきてを繰り返します。備長炭を操る為のひばさみと、火力を上げるために使う、焼鳥職人に必須のアイテム、うちわ!
電気の焼台だとどちらも必要はありません。演出のない職人をみて、お客様は物足りなさを感じるのでしょうか?
以上3点について勉強させてもらおうと思います。
焼鳥職人としての妥協出来ない部分もありますが、僕が相手にしているのはほぼ焼鳥職人以外の一般のお客様なので、今回は一般のお客様目線の食事にしました。
ネタそのものに備長炭の香りがするかどうか
勿論、備長炭の香りはしません。だからといって、不味いわけではなく大変美味しく頂きました。僕はプロなので、焼き色、香りで違いがわかりますが、一般のお客様だと、もしかしたら備長炭を使っていないと気付く人はほとんどいないかもしれません。
煙
かすかに煙が上がりますが、備長炭と比べたらあきらかに少なすぎます。しかし、備長炭の煙の量と、電気の焼台での煙の量の違いがわかる人なんて、焼鳥屋で働く人ぐらいしかわからないと思います。
演出
必須アイテムのうちわとひばさみは、使わないけど、それ以外に職人さんにはしなければならない仕事がたくさんあります。
薬味をかけたり、ネタをひっくり返したり。
忙しさを感じれたら、立派な演出になるので、必須アイテムがないからといって物足りなさを感じることはありませんでした。
レアと生は紙一重
この店でもうひとつ大変勉強になったことがありました。この店では鳥きも串をレアで提供しているようでしたが、その串を食べたら中が冷たく、レアと言うより生でした。
これがもし、食べた瞬間に弾けるように鳥きもが口の中に広がれば『あの店の鳥きもめっちゃ旨い!』となりますが、ただの生焼けの鳥きもになってしまえば『あの店の焼鳥は生が出てくるからやめてた方がいいよ!』となりお客様は減っていきます。
店の売りになるかお客様を減らしてしまうかは紙一重で、繁盛店を作り上げるにはお客様が感じるマイナス評価をいかに減らすか、焼鳥10本出して9本旨くても1本がダメなら全てが無駄になる場合もあるので、一串入魂全て本気で気持ちを込めて焼かなくてはならないという事を教わりました。
アクセス・地図など
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まとめ
プロからみると備長炭を使ってないと言うことはすぐにわかるし、物足りなさを感じます。しかし、一般のお客様目線だと違いはよくわからないと思います。むしろ、煙が出ないので服に匂いがつかず喜んでいるお客様もいるかもしれません。
焼鳥屋の店主として考えると、僕は両方使うのが一番理想ではないかと考えます。(40席以上の場合)電気の焼き台のメリットは、強い火力でネタに均等な焼を入れることが出来ること。電気である程度焼を入れて、備長炭で仕上げる。
そこで、備長炭の香り、煙、演出を全てクリアしたら、効率よくスムーズに焼鳥を理想の形でお客様に提供出来るのではないか?
今日も大変勉強になりました!